■世界不況 「派遣切る側」も苦悩 1日数百人に通告
◇契約打ち切り恐れ、メーカーに抗議できず
金融危機の影響で、メーカーが派遣労働者を削減する「派遣切り」が加速する
中、労働者を送り出す大手製造業派遣会社の社員が毎日新聞の取材に応じ、契
約打ち切りを通告する立場の苦悩を訴えた。労働者に対する人権侵害とも言え
る違法行為に触れることも少なくないが、仕事をもらう派遣会社の社員として
は、メーカーに声を上げることもできない。社員は「路頭に迷う労働者を救え
ないのがつらい。すごく切ない」と打ち明けた。
この派遣会社の場合、契約の打ち切りはこれまで1日数人の規模だったが、最
近は数十人程度に及んでいるという。多い日は数百人に打ち切りや更新しない
ことを告げる。西日本の工場で3年にわたって無遅刻無欠勤で働き続けた50
代男性。社員はこの男性に契約打ち切りを通告した。男性は「長い間お世話に
なりました」と頭を下げたという。社員は「新たな仕事を紹介したいのだが…
…。申し訳ない」と謝った。「状況は分かっている。何とか自分で探します」
と、理解を示した男性の言葉が余計につらかった。
契約打ち切りを告げた人のその後も気になる。会社の寮を出た40代男性に
11月、電話をした。男性からは「実は今、愛知県の公園に住んでいる」と打
ち明けられた。社員は「今は新たな求人がない。助けることができない」と、
うつむいた。
メーカーが派遣労働者を選別することは法律で禁止されている。しかしこの社
員によると、製造現場では事前面接や筆記試験があったり、受け入れ後に作業
を覚えられない派遣労働者を名指しで交代させることもある。
西日本の大手家電メーカーでは、派遣労働者が正社員と同じ食堂で昼食を食べ
ることすら許されない。「なぜこんなことをするのか」。社員は不満を募らせ
るが、契約を打ち切られるのを恐れ、メーカーに抗議することはできない。社
員は「メーカーは今まで安い賃金で大もうけしたのだから、その分を派遣労働
者に返してほしい。せめて安心して働かせてやって」と話した。
毎日新聞 2008年12月16日